【公庫の返済が厳しい】リスケジュール(条件変更)の全手順と、絶対にやってはいけないNG行動

事業は決して計画通りには進まない。創業時にあれほど輝いて見えた未来予想図(事業計画書)とは裏腹に、売上は思うように伸びず、予期せぬコストだけがかさみ、あなたの会社のキャッシュフローは日増しに悪化していく。

そしてついに、創業融資の毎月の返済日が、まるで処刑宣告の日ように重くあなたの肩にのしかかる。

「今月の返済ができないかもしれない…」
「もう終わりだ。夜逃げするしかないのか…」
「高金利でもいい。どこか今すぐ貸してくれるところはないか…」

もしあなたが今、そんな絶望的な資金繰りの淵に立たされているとしたら。どうか、その破滅への一歩を踏み出す前にこの記事を最後まで読んでください。

あなたのその苦境は決してあなた一人だけのものではありません。そして、あなたが今取ろうとしている最悪の選択(逃げる、あるいは高金利の借金に手を出す)以外の、「公的に認められた起死回生の道」が確かに存在します。

この記事は、そのあなたの事業とあなたの人生を守るための究極の「サバイバル・マニュアル」です。日本政策金融公庫というあなたの最大の債権者(お金を貸した相手)といかに誠実に向き合い、「リスケジュール(返済条件変更)」という合法的な時間稼ぎを勝ち取るか。

その全手順と、あなたが差し出すべき覚悟の証(経営改善計画書)、そしてその代償としてあなたが失うもの。その全ての現実を、新宿で数えきれないほどの企業の再生の現場に立ち会ってきた私たちが徹底的に解説します。

第1章:【金融機関の本音】なぜあなたは「正直に」相談すべきなのか?

返済が苦しくなった経営者が犯す最大の過ち。それは、「恐怖」と「プライド」から金融機関に連絡もせず、その問題を「隠蔽」しようとすることです。

しかし、あなたがまず知るべきは、金融機関(公庫)の担当者が最も恐れている事態は何なのか、という彼らの「本音」です。

彼らが最も恐れるのは、「赤字」ではなく「連絡が取れなくなること」

融資担当者の仕事は貸した金を回収することです。そして、その回収のプロセスにおいて最も厄介でコストがかかるのが、相手が音信不通になり法的な手続き(差し押さえなど)を取らざるを得なくなる事態です。

彼らにとって、

  • 「今、経営は苦しい。しかし立て直す意思はある。だから返済を待ってほしい」と誠実に相談してくる経営者

と、

  • 「電話にも出ず、督促状も無視し、どこにいるのかも分からない連絡の取れない経営者

とでは、その対応は天と地ほど異なります。

前者は、たとえ赤字でもまだ交渉と再生の余地がある「パートナー」です。しかし後者は、もはや交渉の余地のない単なる「不良債権」であり、機械的な法的措置の対象でしかありません。

あなたが経営者として生き残るための最初の、そして最低限の義務は、「決して逃げないこと」。そして、最も苦しい状況を最も早くあなたの最大の債権者である公庫に正直に相談することなのです。

第2章:【起死回生の一手】「リスケジュール(返済条件変更)」とは何か?

その誠実な相談のテーブルの上で、あなたが公庫に要求する唯一の、そして最も現実的な選択肢。それが、「リスケジュール(リスケ)」、すなわち「返済条件の変更」です。

「リスケジュール」の具体的な中身

リスケジュールとは、あなたの現在の経営状況(キャッシュフロー)に合わせて、当初の融資契約の内容を一時的に変更してもらうことです。

創業期の経営者が行うリスケジュールの最も一般的な形態は、

「一定期間(例:半年~1年間)、『元金』の返済をストップし、『利息』だけの支払いにしてもらう」

という方法です。

創業融資の返済額の大部分は「元金」です。この最も重いキャッシュアウトを一時的に止めることで、あなたの会社の資金繰りは劇的に改善します。

リスケジュールがもたらす絶大な「時間」というメリット

重要なのは、リスケジュールがあなたの借金を帳消にする魔法ではないということです。

リスケジュールがあなたにもたらす唯一、しかし最大のメリット。それは「時間」です。

毎月の「返済の恐怖」から一時的に解放されたその貴重な「時間(半年~1年)」を使って、あなたは経営者として本来やるべきだった、

  • 売上を上げるための抜本的な営業改革
  • 利益を確保するための徹底的なコスト削減

といった本業の「経営改善」に全神経を集中し、会社を黒字化させるための最後のチャンスを与えられるのです。

第3章:【天下の宝刀の「副作用」】リスケジュールがあなたの会社にもたらす2つの「重い現実」

この起死回生の一手は、当然ながらノーリスクで使えるものではありません。その行使と引き換えに、あなたは2つの極めて重い「代償」を支払うことを覚悟しなければなりません。

リスケジュールで支払う2つの重い「代償」

デメリット(代償) 具体的な内容
1. 信用の失墜 金融機関内部の「信用格付」が最低ランク(要注意先など)に引き下げられる。
2. 未来の閉鎖 「追加融資」の道が原則として閉ざされる。(自力での再生が必須となる)

デメリット1:【信用の失墜】金融機関の「評価」が最低ランクに変わる

あなたがリスケジュールを申し込んだその瞬間。あなたは「自力で約束通りの返済ができない財政状態の会社である」ということを公的に認めたことになります。

これにより、金融機関の内部的なあなたの会社の「信用格付」は、正常な「正常先」から一気に「要注意先」、あるいはそれ以下の「要管理先」といった最低のランクに引き下げられます。

この格付はあなたの会社の信用情報に深く刻み込まれ、この後解説する深刻な事態を引き起こします。

デメリット2:【未来の閉鎖】「追加融資」の道が原則として閉ざされる

これが最も厳しい現実です。

信用格付が最低ランクに落ちた会社に対して、金融機関が新たな お金(追加融資)を貸し出すことは原則としてありません。

リスケジュールをするという選択は、「今後一切の外部からの資金調達は諦めます。私は今手元にある現金と、これから稼ぎ出す本業の利益(キャッシュフロー)だけで会社を立て直してみせます」という極めて重い覚悟の宣言でもあるのです。

この退路を断たれた状況下で事業を再生させるという茨の道を歩む覚悟があなたにあるのか。それが問われます。

第4章:【実践ガイド】公庫との「リスケ交渉」を成功させる全手順

では、この重い決断を公庫に認めさせるためには、具体的に何をどうすれば良いのでしょうか。

STEP 1:【相談のタイミング】「延滞する前」に連絡する

絶対にやってはいけないのは、「実際に返済が止まってから(延滞してから)」相談すること。これは最悪のタイミングです。

ベストなタイミングは、「あなたの会社の資金繰り表を作成し、このままでは1ヶ月後あるいは2~3ヶ月後に資金がショートする」と客観的に予測できたその瞬間です。

あなたの会社の所轄の公庫の支店に電話をし、「経営状況のご報告と今後の返済計画についてご相談があります」と正直にアポイントを取ってください。

STEP 2:【最強の武器の準備】「経営改善計画書」

手ぶらで相談に行ってはいけません。「苦しいです。助けてください」という感情論(お願い)だけでは、担当者は交渉のテーブルにさえついてはくれません。

あなたが必ず持参すべき唯一の、そして最強の「武器」。それが「経営改善計画書」です。

リスケ交渉の「武器」=経営改善計画書の3要素

要素 内容(=金融機関へのメッセージ)
1. 原因分析 (Why) なぜ経営が悪化したのか(客観的な分析)
→「他責でなく、現実を直視している」
2. 改善策 (How) リスケ期間中に何を実行するか(具体的な行動計画)
→「役員報酬カットなど、身を切る覚悟がある」
3. 数値計画 (When) 新しい資金繰り表。いつ黒字化できるか(再生の道筋)
→「感情論ではなく、数字で未来を語れる」
  1. 【原因分析】なぜ経営が悪化したのか
    (例:「創業計画に比べ、コロナ禍の影響で新規の顧客獲得が計画の60%に留まったため」など、客観的な原因分析)
  2. 【具体的な改善策】リスケジュール期間中に何を実行するのか
    (例:「不採算の〇〇事業から撤退し、利益率の高い△△事業に経営資源を集中する」「役員報酬を〇%カットし、固定費を月額〇〇万円削減する」など、具体的で実行可能な行動計画)
  3. 【数値計画】その結果、いつ黒字化できるのか
    (例:上記の改善策を実行した結果を反映した新しい「資金繰り表」と「収支計画書」。それにより、「半年後には単月黒字化を達成し、1年後からは返済を再開できる」という未来への具体的な道筋を数字で示す)

プロの視点:
この金融機関を納得させられるレベルの客観的で論理的な「経営改善計画書」を、経営者が一人で作成するのは至難の業です。私たち税理士は、まさにこのあなたの会社の財務状況を分析し、再生への具体的な数値計画を策定するプロフェッショナルです。この最も困難な局面でこそ、私たち専門家の力が必要とされるのです。

STEP 3:【面談】「誠実さ」と「強い意思」を伝える

STEP 2で作成した計画書を基に、公庫の担当者と面談します。

ここで重要なのは、取り繕うことではありません。過去の計画の甘さを正直に認めた上で、「しかし、私にはこの経営改善計画を断行し、必ず事業を立て直すという強い意思がある」というあなたの経営者としての覚悟を誠実に伝えることです。

担当者があなたのその覚悟を認めれば、リスケジュールの手続きは前向きに進んでいきます。

第5章:【絶対NG!】返済が厳しい時に経営者が犯す3つの「自殺行為」

最後に、公庫への誠実な相談という正しい道を選ばず、経営者が陥りがちな破滅への3つの選択肢について解説します。これだけは絶対に選んではいけません。

資金繰りに詰まった時の「自殺行為」ワースト3

NG行動 待ち受ける結末
①「逃亡」 (連絡無視) 信頼関係が崩壊。即座に「法的措置(差し押さえ)」へ移行。
②「高金利借入」 (カードローン等) 利息負担が雪だるま式に増加。「自転車操業」で破綻が早まる。
③「粉飾」 (嘘の決算書) 明確な「犯罪(詐欺)」。発覚すれば一括返済を求められ経営者生命が終わる。

自殺行為①:「逃亡」― 電話に出ない、督促状を無視する

結末:信頼関係が完全に崩壊。公庫は即座に「交渉の余地なし」と判断し、事務的かつ法的な「債権回収(差し押さえなど)」のプロセスに移行します。もしあなたが連帯保証人であれば、あなたの個人の資産もその対象となります。

自殺行為②:「悪魔のささやき」― カードローンや高金利のビジネスローンでその場を凌ぐ

結末:公庫への低金利な返済(例:月10万円)ができないからといって、金利15%のカードローン(例:月3万円の返済)でその10万円を補填する。これは経営者として最も愚かな「自転車操業」です。あなたの利息負担は雪だるま式に増加し、会社の資金繰りはさらに悪化。破綻までの時間を早めるだけの愚策です。

自殺行為③:「粉飾」― 赤字を隠すために「粉飾決算」に手を染める

結末:赤字の決算書を提出したら追加融資が受けられないと思い込み、売上を水増ししたり経費を隠したりした嘘の決算書を作成する。これはもはや経営判断ではなく、明確な「犯罪(詐欺)」です。発覚すれば全ての融資が一括返済を求められ、あなたの経営者としての人生が終わります。

第6章:【FAQ】「リスケジュール」に関する一歩進んだ疑問

最後に、リスケジュールという重い決断を前に、経営者の皆様が抱くさらなる疑問にお答えします。

Q1. リスケをすると、個人信用情報(CICなど)に傷(ブラックリスト)は付きますか?

A1. これは非常に重要なご質問です。結論から申し上げますと、日本政策金融公庫や銀行といった正規の金融機関との交渉による合意の上での「リスケジュール」は、あなたの個人信用情報(CIC、JICCなど)には一切記録されません。

あなたの個人信用情報に傷(「異動」情報)が付くのは、あなたが返済を61日以上あるいは3ヶ月以上「延滞」した場合や、「債務整理(自己破産など)」を行った場合です。

リスケジュールが「信用情報」に与える影響

情報の種類 リスケの影響(※延滞前の相談)
① 個人信用情報 (CIC, JICC)
(通称: ブラックリスト)
影響なし(傷は付かない)
② 金融機関の「内部」格付
(通称: 内部ブラックリスト)
最低ランクに下がる(要注意先)

プロの視点:
だからこそ、「延滞する前」に「誠実に相談する」ことが、あなたの個人の信用情報を守るためにも絶対に不可欠なのです。

ただし、金融機関の内部的な「信用格付」は前述の通り最低ランクになります。これはCICとは別の、金融機関独自のブラックリスト(要注意先リスト)に載ると考えて差し支えありません。

Q2. 公庫でリスケをしたら、他の民間銀行からの借入にも影響はありますか?

A2. はい、間違いなく影響があります。

金融機関同士は、あなたが思っている以上に情報を共有しています。あなたが公庫でリスケジュールを行ったという事実は、あなたの決算書(借入金の返済が進んでいない)や、あるいは直接的な情報連携によって、あなたのメインバンク(信用金庫など)にも必ず伝わります。

その結果、メインバンクもあなたの信用格付を引き下げ、追加融資はストップします。これが、「リスケを行うと全ての銀行から追加融資が受けられなくなる」と言われる理由です。

正しい戦略
したがって、リスケジュールの交渉は、公庫だけといった個別対応ではありません。取引のある全ての金融機関を同時に集め、あなたの経営改善計画書を提示し、全ての金融機関に平等な条件でのリスケジュール(一時的な返済停止)をお願いする。これが金融機関同士の不公平感をなくし、チームとしてあなたの再生を支援してもらうための唯一の正しい交渉術です。

Q3. リスケ期間が終了した後、返済はどうなるのですか?

A3. リスケ期間(例:1年間、利息のみ)が終了すると、あなたは金融機関と再度交渉のテーブルに着きます。

理想のパターン(事業再生)
あなたが提出した「経営改善計画書」通りに事業がV字回復し、黒字化およびキャッシュフローの改善が達成された場合。「この1年間ご支援ありがとうございました。お陰様で計画通り経営が改善しましたので、来月から当初の契約通りの返済を再開いたします」と宣言します。これにより、あなたの信用は大きく回復します。

現実的なパターン(再生途上)
「計画通り赤字からは脱却できましたが、まだ当初の返済額(元金10万円)を全額支払う体力はありません。しかし、元金3万円ずつであれば確実にお支払いを再開できます。どうか、もう一年返済額を減額していただけないでしょうか。」

最悪のパターン(破綻)
「1年間猶予をもらいましたが改善は見られず、利息の支払いさえ困難になりました…。」この場合は、破産や廃業といった法的な整理の手続きへと進むことになります。

結論:「返済が厳しい」と認めること。それが経営者の最後の「仕事」

返済が厳しい。その現実を直視し、受け入れ、そして最も重要なステークホルダーである金融機関に誠実に頭を下げる。

それは決して「敗北宣言」ではありません。

それは、あなたの会社と従業員、そしてあなたの家族の未来を守るために、経営者が下すべき最も勇気ある、そして最も責任ある「経営判断」なのです。

その最も孤独で最も困難な決断の瞬間に。

あなたの会社の財務状況を誰よりも深く理解し、あなたの隣で金融機関に対し論理的な再生の道筋を共に語ることができる、私たち専門家の存在があなたの起死回生への最強の武器となるはずです。

その一本の電話をかける前に。

手遅れになるその瞬間の前に。まずは私たちに無料でその苦しい胸の内をお聞かせください。
あなたの会社の再生への道を、私たちと一緒に見つけましょう。

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記事執筆監修者

荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。

    

会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。

事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F

電話番号 0120-016-356

所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部

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